12月末から始まる今回のミニ特集では、干支(えと)を取り上げ、ネズミとウシをモチーフとした作品をご紹介します。
民話「十二支のはじまり」によると、ネズミはネコをあざむいた上に、ウシの背中に乗ってこっそり一番乗りをし、十二支のトップとなります。かなり狡猾な存在ですが、その機敏な行動力は認めざるをえません。一方、ウシは誰より早くスタートしましたが、ネズミにしてやられても怒ることさえなく、二番手に甘んじています。努力や誠実さを表す穏やかな存在といえます。
さて、美術の世界で両者を比較してみると、多く描かれてきたのは圧倒的にウシの方でしょう。ウシは伝統的にウマとならぶ代表的な家畜であり、さらに西洋ではその肉や乳は食材として欠かせないものだったからです。バルビゾン派のトロワイヨンなどは牛の専門画家として知られていますし、東洋でも、例えば禅画の十牛(じゅうぎゅう)図は伝統的な画題として描かれ続けてきました。一方、同じく人々の身近にありながらも、ネズミはその生活を乱すいわば害獣でした。それでも、しばしば愛嬌のある存在として捉えられてきました。『本朝画史』によると、修行中の雪舟が足で描いた涙の絵はネズミでしたし、ウォルト・ディズニーはネズミを今や世界で最も有名なキャラクターに育て上げました。最近では、覆面画家バンクシーが神出鬼没のネズミをモチーフにしています。
所蔵品の中から選んだ、ネズミとウシの作品のいくつかをお楽しみください。皆さまにとって、ネズミがシンボルの2020年は果たしてどのような年だったでしょうか?そしてウシがシンボルの2021年はどのような年になるのでしょうか?
■会期
2020年12月22日(火曜日)~ 2021年3月7日(日曜日)
■会場
2階常設展示室
アンディ・ウォーホル《ミッキー・マウス》1981年(寄託品)
新納忠之介《牛の像》制作年不詳
時任鵰熊《臥仔牛》1907年
黒田清輝《自画像》1889年
アンリ・マチス《窓辺の婦人》1919年(※およそ9か月ぶりの展示となります)
最終更新日:2020年12月19日
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※毎月第3日曜日は小・中学生常設展示観覧料無料