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更新日:2023年8月28日

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第8回児童書出版助成作品決定

児童文学の書き手の育成などを図るため、児童文学に関する優れた作品に対して出版助成を行う児童書出版助成について、第8回の助成作品が決定しました。

制度の概要

児童文学の書き手の育成などを図るために、児童書に関する「原稿」を募集し、優れた作品に対して出版助成を行う。

助成額は、出版実費の2分の1以内で、50万円を上限とし、出版後助成する。

助成対象の出版物は、市が必要部数を購入し市内の学校・図書館等に配布する。

助成作品

作品名

「かごしま維新伝心」

作者名

文:岩川拓夫氏
絵:東雲ののか氏

作品のジャンル

鹿児島の歴史

応募状況・講評

応募作品数

5作品

応募状況
作品名 ジャンル
かごしま維新伝心 鹿児島の歴史
きくちゃんのなみだのあじ 絵本
薩摩にて、生きる―真田大助の手記―

歴史小説

静かな少年とクズリの物語 児童文学
夏果ての道 児童小説(中編)

選考委員の応募作品講評

【選考委員】(五十音順)
石田忠彦氏(かごしま近代文学館アドバイザー・選考委員長)
廣尾理世子氏(鹿児島純心女子高等学校教諭)
森孝晴氏(鹿児島国際大学教授)

作品名:「かごしま維新伝心」

石田委員長

1.島津家を軸に、鹿児島の維新前後の歴史が分かり易くまとまっていて、小中学生に読ませたい好著である。
2.西欧とくに英国の動向と対比しつつ、いわゆる偉人伝ではなく、広い視野で、人物の業績に眼を配った記述が得がたいものになっている。
3.挿絵も、児童や生徒に歴史に興味を持たせる効果を充分に発揮している。
4.歴史に関する用語も分かり易さに留意した記述になっているが、ただいくらかは難解な用語が残っている。

廣尾委員

イラストとコラムとを組み合わせることで、子どもたちに「維新」とはどんなものかを伝える役割を持った作品です。南日本新聞での連載がベースとなっていることもあり、完成度が高く、また、見開きの形で読みやすいと感じました。この1冊を読み終えると「維新博士」になること間違いなし!鹿児島県だけでなく、全国の子どもたちにも手にとってもらえると素敵だな、と感じました。難を言えば、最初の「幕末維新を知る前に」1~3の部分にもある程度イラストを配置しておいた方が、導入部から印象づけることができるのでは?

森委員

絵とともに、わかりやすく、かつ楽しく鹿児島の歴史を学べる作品で、教育的であるので学校現場で活かせる力作である。フィクションではないので全体的なストーリー性に欠けるのはやむを得ないが、ミスプリが多いのは気になる。

作品名:「きくちゃんのなみだのあじ」

石田委員長

1.全体的に平板で、読者を引き付けるような事件やエピソード(挿話)がない。戦中戦後、戦地から肉親の復員が遅れたということは特別珍しいことではなかった。
2.終りに付け加えられている、小説のモデルの説明と賞状(?)との意味が分からない。この付加で事実を書こうとしたのかと受け取られてしまう欠点がある。

廣尾委員

出征した父親の代わりに家族の大黒柱の代わりとなった少年の健気な姿が印象的です。戦争によって変わりゆく家族の生活という、重い、けれども重要なテーマを優しい語り口で伝えてくれました。素朴なタッチの絵も、家族の雰囲気に合っていて魅力的です。ただ、構成にもう少し工夫があってもよいのではないかと感じます。最後の家族リレーの場面が素敵なので、ここを中心に、過去の回想が入る…といった構成にすると、さらに面白くなると感じました。

森委員

暖かい話で、強い生き方や平和の大切さが読み取れるが、ややオリジナリティーやストーリー展開に欠ける。絵は効果があるが、ややずれがある。

作品名:「薩摩にて、生きる―真田大助の手記―」

石田委員長

1.この小説の理解には、豊臣家と徳川家の関係や、真田一族、それに淀君や千姫についての歴史的な知識が必要なために、現在の子供たちには何の話か分からないのではないか。
2.詳細な後注があるが、小説に注は一般的にはつけない。また、その注自体が子供には難しい。それに事実に関する注をつけると虚構ではなくなる。あとがきも不要である。

廣尾委員

真田幸村の息子大介が、豊臣秀頼や淀君と共に薩摩の地にたどり着く…立川文庫「真田十勇士」や大河ドラマ「真田丸」の続編のようで興味深いお話です。子どもたちが歴史や郷土に親しむためのはじめの一歩となるような作品だと感じました。ただ、児童書としては少し渋過ぎるのではないでしょうか。主人公と薩摩の地との化学反応がダイナミックに描かれるような仕掛けがあると、さらに面白くなると感じました。

森委員

年表があるのはいいことだが、特に子供には人間関係がわかりにくいので、初めに登場人物の紹介や系図などを入れたい。また、短いので、やや物足りないし、できれば絵が欲しい。ただ、フィクションと史実の混じり合いは面白い。

作品名:「静かな少年とクズリの物語」

石田委員長

1.身体に障害を持つ男の子の、その母親それにクズリと一緒の、自然の中での成長過程が、優しい雰囲気の中で描き出されている。しかし、途中(3の後半)から環境破壊などの社会問題に結び付けようとして、全体のバランスが崩れてしまった点が残念であった。前半の物語世界で全体をまとめてほしかった。
2.後半では、語彙が、差別用語などが混じったりして乱暴になり、いきなり大人の議論がむき出しになったりもして、前半の雰囲気を壊してしまった。
3.また、後半の内容も、ライオン射殺の挿話など年少の読者にはどうかというものもあり、結末のクズリによるハンター咬殺は勧善懲悪的な別の物語になってしまっている。

廣尾委員

この作者の作品はいつも興味深く拝読しています。自然が人間の心に与える影響という作者の一貫したモチーフが、クズリ(クロアナグマ)と少年の交流を中心に描かれています。マーベル映画のヒーロー「ウルヴァリン」の名前の由来であるクズリという動物の魅力に夢中になりました。後半から登場するワタリガラスの役割、また少年の「遺志」がパソコンの検索機能によって解き明かされるなど、様々な工夫が施されて読ませる作品です。ただ、ところどころ物語の流れを止める「説明」「演説」が多用されている点が気になりました。

森委員

できれば絵が欲しい。命や障害、環境問題(温暖化)、社会制度などについて考えさせる社会性のある作品で、感動的である。詩的な文章であるが、ことばの選び方に慎重であるべきだ。若干ミスプリが散見される。

作品名:「夏果ての道」

石田委員長

1.幼い時に過ごした父と祖父との実家を捜しての小旅行の過程で、二人の子供の性格と境遇とが説明され、アメリカ映画のロードムービー風の構成になっている。
2.二人が出会う様々な生き方をしている人々の書き込みが足りないという恨みが残る。そのために、二人への人々の影響が今一つ強く感じられない。
3.舞台を、北薩と熊本南部に設定してあるが、出発地は架空のままで、架空の地名の方がより効果があったのではないか。実在の地名だと、その事実性に影響され、物語としての雰囲気が壊れてしまう。

廣尾委員

「子供の孤立」という現代の問題を描きながら、南九州の風土や過疎化の風景も取り入れてあり、一気に読ませる作品です。描写が非常に丁寧で、読み手の目の前に風景が立ち上がって来ます。是枝裕和監督の映画の影響も感じられ、このまま映画にしても面白いと感じました。その一方で、主人公の「実久」のセリフまわしが70年代の少女漫画を思わせる不思議なテンポがあり、これが作品に独特のリズムを生み出しています。ラストも下手に甘くせず、読者にその後を考えさせるようになっており、児童書としての深みも感じられました。

森委員

多少ミスプリがあり、やや冗長な印象がある。実久と直樹はやや大人びていて、少し不自然な感じがある。人々が親切すぎて、通報をしないなど、リアリテイーにやや問題もあるが、ロードムービー的な力作である。結末が少し尻切れトンボで、想像できるだろうという前提だとしても、結末がどうなるか気になる。

よくある質問

お問い合わせ

市民局市民文化部文化振興課

〒892-8677 鹿児島市山下町11-1

電話番号:099-216-1501

ファクス:099-216-1128

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