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更新日:2018年1月25日
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鹿児島市景観まちづくり賞は、市民や事業者の皆様とともに、鹿児島の良好な景観を創り、守り、育てていき、地域性豊かで風格があり、市民誰もが愛着と誇りを持てる美しい鹿児島のまちづくりを進めていきたいという願いを込めて、過去10回実施してきた鹿児島市建築文化賞を発展させ、創設したものです。
この賞は良好な景観形成に寄与する民間建築物を対象とした「建築部門」と、良好な景観形成に市民の方などが寄与したまちなみ・田園・海岸・緑地などの景観や、景観まちづくりに関する住民活動を対象とした「景観部門」で構成されます。
第1回となる今回は、平成22年6月24日から7月30日まで募集を行い、応募のありました建築部門43件、景観部門5件の中から、厳正な審査を経て、下記の建築部門3件、景観部門3件を決定しました。
県道から少し入った閑静な住宅地に建つ専用住宅である。内部空間と外部空間のいずれにおいても、バランスのとれた洗練された設計が施されており、質の高い建築作品といえる。
2階に張り出した大きく深い庇と細やかな縦格子は、鹿児島の厳しい日差しや桜島の降灰から日常生活を守り、プライバシーを保護しつつ、外観にも豊かな表情を与えている。
また、道路脇の樹木、スロープ、タイル張りの柱などから構成されるアプローチ空間の巧みさが、内と外とを適度な距離感で区切りながら、この住宅を周囲の街並みに溶け込ませる役割を果たしている。
住宅内部は中庭を中心に構成されており、家族が相互につながり合い、お互いの存在を感じとることができるように工夫されている。
昨今の都市型住宅では、周辺の環境条件の悪化やセキュリティへの不安もあって、外から見て誰が住んでいるかも分からないような閉鎖的な空間構成がとられることが多い中で、それとなく内部の様子が分かる比較的開放的な外観を構成することにより、周辺の街並みとの連続性を確保し、景観形成に貢献している点は高く評価できる。
都心部に建つビジネスホテルであるが、狭小地であるにも関わらず、密度ある空間と開放感を創り出すことに成功している。周辺はパチンコ店やゲームセンターといった個性の強い建築群が並び、そのエリアの中に空が見える空地を提供し、アーケードの雰囲気を一新している。
景観形成の観点からみると、天空率を使った斜線制限緩和の制度を活用して生まれたセットバック部分を緩衝空間として組織することにより、街と建物との新たな関係のあり方を提案している点が高く評価される。前庭・アプローチ空間は、人々にほっと一息つくことができる空地を提供し、格子とシマトネリコが見え隠れする路地空間は、ロビーに開放感をもたらしている。
この建物のもう一つの特徴は、鹿児島の「黒」という伝統色をアーケード面のファサード、大庇、低層部分、インテリアなど、至る所にちりばめていることである。
また、春になると赤褐色の新芽がふくチャンチンの木は、ホテルの視認性と季節感を持ち込む重要な要素であるため、継続的なメンテナンスが求められる。
こうしたミクロな創意工夫の連鎖が都市景観に質的変化をもたらすはずであり、その意味でこの提案は景観まちづくりの小さな一歩ではあるが大きな可能性を秘めた試みといえる。。
繁華街に近い場所に建つ集合住宅である。裏通りの様相を見せる街並みに対して、閉鎖的な空間にするのではなく、街路側のファサードは大きな開口部からなる端正な外観とし、側面にも半戸外の共用廊下を貫通させ、都市に対して開放的な景観を構成している。
内部空間の構成はきわめて巧妙である。賃貸住戸はフラット、メゾネット、スキッププランの組み合わせで構成され、2階と4階の共用廊下からアクセスする方式となっている。6~7階には所有者の住戸がある。街路面は、3~5階が1.5階分の高さをもつ吹抜空間2層となっており、6~7階が1層に見えるため、7階建の建物が外観上は5層に見える個性的な構成となっている。
若い世代を対象とした賃貸住宅であるが、質の高い建築に手頃な家賃で入居できるよう工夫されている点は評価できる。しかし、居住者同士のコミュニケーションや地域コミュニティとのつながりがあまり感じられない点についてはもう少し工夫があってもよかったと思われる。
最上部に所有者が居住している点は都市型住居として重要である。所有者が地域コミュニティの中に継続的に居住している場合、良好な住環境マネジメントが持続的に行われる可能性が高いからである。今後のコミュニティ形成や景観づくりに期待したい。
かつて大原台地には桜の巨木が30本ほど並び、草原には季節の草花が咲き乱れていたが、いずれもその後の地域開発でいつしか消えてしまった。消えゆく美しい環境をよみがえらせ、花と緑がいっぱいの住環境にしようと4集落の住民が話し合い、平成16年から公民館連絡協議会を母体として、手作りの「花いっぱい運動」に取り組んできた。
具体的には、大原バス停付近の150mに及ぶ県道沿いの空き地に、花木2500本を植え、「大原フラワーロード」と命名し、以来6年半にわたって会員の全体活動として維持管理を行ってきたのである。
この環境美化運動は、公民館、子ども会、老人会等が参加していることから、町内や世代を超えた住民のふれあいの場となっているが、現在では旧住民30%に対し、新住民が70%に達していることもあって、旧住民と新住民の交流の場としても重要な役割を果たしている。
このように、大原地区フラワーロードづくりは、地域住民の人間関係やコミュニティの形成にも大きな役割を果たしており、優れた景観まちづくり活動として高く評価できる。
八重山の山腹の急傾斜地に広がる、広さ12.4ha、約240枚からなる石積みの棚田である。遠くには桜島や錦江湾を望める素晴らしい景観である。
現地審査では、稲刈り後の田んぼの野焼きによる煙がたなびく情景を見ることができたが、眼前の棚田からは、田植え前の水が張られた情景、稲が生育した緑の草原の情景、稲穂が実り一面黄金色になった情景などが目に浮かぶ。他にも、菜の花やレンゲといった景観作物も作付され、道路沿いに水仙も植えられ、訪れる人の目を楽しませるための様々な工夫が施されている。
現在、地元の農家約35軒を中心に、「八重地区棚田保全委員会」が組織され、美しい棚田を維持保全する活動を展開している。また、会員相互の緊密な連携のもと、都市住民との共同による農地の保全と地域の活性化にも取り組んでいる。これらの住民活動も、美しい棚田の景観ともに高く評価されるべきものである。
現実には、農作業の担い手の高齢化・後継者問題は深刻であるが、棚田の多面的機能の良好な発揮と集落の活性化を図る方策は色々考えられるはずである。八重の棚田の景観が市民共有の財産として持続的に維持保全されていくことを願ってやまない。
三越鹿児島店の撤退による中心市街地の空洞化が懸念されていた「いづろ・天文館地区」において、地区の活性化と回遊性を維持するために、商業施設として再生を図った施設である。
「ユナイトメント」(unitement=すべてをつなぐ)をコンセプトに、多くのコミュニティスペースを設けてコミュニティを取り込み、百貨店のようでありながらも出会いや交流のある「買い物集会所」を目指した施設である。壁面緑化と屋上緑化は、成長していく緑のように、この施設が「みんなが自然と集まれる場所」に育つことを願うシンボルである。
景観は外観にとどまらず、建物、店舗、ギャラリー、緑などの空間・事物とそこに集う人間とが織りなす生活のドラマから生まれるものである。様々なスペースで繰り広げられる活動を通じて人々の心の中に浮かび上がるものも、マルヤガーデンズの景観なのである。
この施設は本年4月に開業したばかりで、評価が分かれたが、都市景観と地域コミュニティを同時に形成しようとする若い世代の意欲的な取組を景観まちづくりに新風を吹き込む試みとして高く評価した次第である。大切なことは、新しい景観を将来にわたって育てていくことである。緑化についても、持続的にしっかり取り組んでいただきたい。
1.募集期間
平成22年6月24日~7月30日
2.募集対象
(1)建築部門
市内にあり、美しい街並みと豊かな都市環境に寄与し、街に潤いと魅力を与えている民間建築物で、平成12年4月1日から平成22年7月30日までに建築基準法による検査済証の交付を受けたもの
(2)景観部門
3.応募件数
(1)建築部門:43件
(2)景観部門:5件
4.審査会
(1)期間 平成22年10月29日~31日
(2)審査会委員
委員長 |
門内輝行 |
京都大学大学院工学研究科建築学専攻教授 |
---|---|---|
副委員長 |
井上佳朗 |
鹿児島大学法文学部教授 |
委員 |
木方十根 |
鹿児島大学大学院理工学研究科准教授 |
委員 |
坂田祐介 |
鹿児島大学農学部教授 |
委員 |
古川惠子 |
鹿児島女子短期大学生活科学科教授 |
委員 |
下原美保 |
鹿児島大学教育学部准教授 |
委員 |
東川美和 |
NPO法人かごしま探検の会事務局長 |
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