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更新日:2018年1月25日
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鹿児島市景観まちづくり賞は、市民や事業者の皆様とともに、鹿児島の良好な景観を創り、守り、育てていき、地域性豊かで風格があり、市民誰もが愛着と誇りを持てる美しい鹿児島のまちづくりを進めていきたいという願いを込めて、実施しているものです。
この賞は良好な景観形成に寄与する民間建築物を対象とした「建築部門」と、良好な景観形成に市民の方などが寄与したまちなみ・田園・海岸・緑地などの景観や、景観まちづくりに関する住民活動を対象とした「景観部門」で構成されます。
第2回となる今回は、平成24年5月21日から6月22日まで募集を行い、応募のありました建築部門25件、景観部門4件の中から、厳正な審査を経て、下記の建築部門3件、景観部門2件、特別賞1件を決定しました。
山間の緑豊かな農村部に建設された特別養護老人ホームとグループホームからなる高齢者福祉施設である。敷地周辺に広がる昔ながらの家々が立ち並ぶ集落景観との調和を図るために、木造2階建て瓦葺屋根を選択するとともに、大きなボリュームが突出しないように分節した空間を分散配置することにより、様々な高さの屋根と在来木造の外観が重なり合う集落的な建築を形成している。
特別養護老人ホームとグループホームには、9~10の居室と1つの食堂・リビングからなるユニットがそれぞれ3つ、2つ含まれ、それに地域交流室、託児室などが加わり、それらの大小様々な空間(あるいは建物)が分散配置され、施設全体がさながら一つの村のような構成となっている。そしてそれらの隙間には光庭やハイサイドライトが設けられ、通風・採光を確保し、内外の景観を借景として取り入れるなど、入居者の居住性を高めている。
木の空間は入居者に温もりや柔らかさをもらたすが、可能な限り県産材を使用することで林業振興にすることも企図されている。また、スタッフの子どもを預かる託児室は高齢者施設に生命を吹き込み、地域交流室は周辺住民との繋がりを育むに違いない。
景観まちづくりの観点から特筆すべきは、建物自体で集落あるいは町並みの景観を創り出したことである。歩くにつれて変化する眺めは、日々の暮らしにドラマを生み、心に潤いを与えるはずである。
若い音楽家が住宅地の中で音楽とともに暮らすことができる住まいを提供したいというオーナーの思いを受けて建てられた1LDKの住戸6戸と事務所からなるアパートメントである。
設計者は単に防音性能を高めるだけでなく、良い音が響き、音楽や映像を介して人々が気持ちよく繋がることができる住空間を実現している。すなわち、自立する独立したシェル構造オブジェクトである340mm厚のRC(鉄筋コンクリート)曲面壁を7枚建て、その間に軽量の鉄骨構造の屋根や床を挿入し、個別のエントランスを持つ5層のスキップフロアからなる連続的な空間を構成している。そこには、音を柔らかく拡散させる優れた音楽環境が実現されており、リビングとダイニングの間の幅の広い階段は友人を呼んで演奏会をする際の客席にもなることを想定して設計されている。
構造や音響の専門家と協働して、音楽家のための住宅というプログラムを見事にまとめ上げたところに設計者の確かな力量が認められる。ピアノなどの大型楽器の搬入経路も、螺旋階段とは別に確保されており、気配りが行き届いている。
若い音楽家に質の高い生活環境を提供し、鹿児島の文化に寄与する建築として高く評価できる。
市内中心部に立地する銀行である。北側ファサードは、ガラスとプレキャストコンクリートの列柱によるリズミカルな外観により構成されており、ガラス面には軌道敷を緑化した路面電車が走る周辺の街並みが映り込み、景観上魅力的な要素となっている。
技術的には、列柱はガラスより外側に設けたアウトフレーム形式とし、約12mスパンの整形なオフィス空間を確保すると共に、ファサードに奥行き感と透明感を与えている。丸みを帯びたリブ上の長方形断面をもつ列柱は、鹿児島の厳しい日差しを遮るルーバーの役割を果たす。さらに最上階はセットバックして列柱越しに空を望める開放的な景観を形成している。
また、北側ファサードの4階テラスは中木による緑化を行い、屋上の目隠しルーバー壁には、つる状植物を植えた緑化ブロックを設置して、立体的な植栽空間の形成を図っている。
執務空間は、列柱とそれらをつなぐプレキャストコンクリートの梁・床版を組み合わせた構造形式により、無柱の開放的な大空間となっている。床下の自然換気機構、太陽光パネル、宮崎産の杉の型枠を用いた打ち放しコンクリート壁など、環境技術にも積極的に取り組んでいる。
以上のように、景観・環境・形態・機能・技術などいずれの側面についても、密度の濃い設計が施されており、街並みへの貢献度の高い建築といえる。
豊かな緑に囲まれた城山観光ホテルには、自然と人工の織りなす空間の魅力を賞味できる庭園群が広がる。言うまでもなく城山エリアは鹿児島にとってなくてはならない重要な景観資産であり、城山の原生林との調和に配慮して創り出された庭園群では、クリスマスに合わせたイルミネーションによる演出など、季節ごとに質の高い多様なサービスが提供されている。
今回、和風庭園における旧滝の茶屋を「水簾」としてリニューアルすると同時に、植栽のバリエーションを多くし、四季の草花が一年中咲く、水をテーマとした庭園空間を創出する改修工事が実施されたことを契機として、庭園群の景観的価値を発見されたのではないかと思われる。
和風庭園から連続する洋風庭園としての「テラスガーデン」からは、市街地、錦江湾、桜島を望む素晴らしい眺めを楽しむことができる。これらの眺望を城山の貴重な景観資源とみなし、テラスガーデンをセミパブリックな空間として広く一般利用者に開放し、市街地と桜島を一望するビューポイントとして位置づけていることは高く評価される。
豊かな自然環境の中にある庭園群は、それ自体が鑑賞の対象となる貴重な景観資源であると同時に、市街地や桜島への眺望の視点場を提供する社会的責務を担っていることにも留意すべきである。
「NPO法人桜島ミュージアム」は、桜島全体をまるごと博物館と考え、活火山の周囲に広がる独特の環境を活用しながら、現地で本物を見て、楽しみながら学べる仕組みを作ることを目指して活動している団体である。
具体的には、桜島ガイド事業、各種イベント開催、各種体験プログラムを集め期間限定で開催する「桜島まるごと体験フェア」、椿油の活用・商品化など多岐に渡る活動を展開している。
現在は、桜島の各地でエコツアーやイベントを開催し、多くの人々に桜島の魅力を伝えていく活動が中心となっているが、それを観光、教育、地域振興、福祉、防災等に活かし、地域の人々、子どもたち、観光客など、多くの人々に対する生涯学習、環境学習、地域づくりに寄与することを目指している。
団体の構成員には、火山学者、歴史研究家、まちづくり活動家、公務員、主婦など、多様な関心を抱く幅広い年齢層の人々が含まれており、自分たちの強みと弱みも十分に理解していることから、この団体の活動は持続可能であると判断される。
日本の多くの火山の中でも最も活動的な火山の麓に、人が暮らし、農業や漁業を営んでいるという驚くべき事実を深く理解し、桜島という特定の地域に住み込み、人々に寄り添いながら、地域の発展に貢献する活動を展開していく姿勢には大いなる感動を禁じ得ない。
「鹿児島中央ターミナルビル」
「南国センタービル」
南国センタービル、鹿児島中央ターミナルビルは、2011年の九州新幹線全線開通に向け、鹿児島市の玄関口として変貌しつつある鹿児島中央駅前にふさわしい建物として建設されたものである。すなわち、(1)鹿児島の「顔」にふさわしい街並みをつくる、(2)鹿児島の風土にあった環境取組をする、(3)ビジネス&観光で地域に貢献する、という3点を共通の目標として、駅前の都市景観を創出している。
南国センタービルでは、放射状に広がる特徴的な道路に沿って建物を配置することで、通りや駅前広場に対する街並み形成に配慮しているが、特に都通り側の低層部を道路よりセットバックさせ、歩行空間を拡大することでバス停まわりを広げており、優れた地域貢献として高く評価できる。
鹿児島中央ターミナルビルは、南国センタービルに続く一連の駅前開発で建設されたものである。高層と低層にボリュームを分けて周辺に対する圧迫感を軽減するとともに、鹿児島中央駅から桜島の景観に配慮し、高層部を絞り込んでいる。
いずれのビルも強い日差しの遮蔽と大きな窓の両立を目指して、縦ルーバーとガラス面によるファサード構成となっており、光と影が彫りの深い外観を作り出し、鹿児島らしい地域性を感じさせる。
21世紀を迎えて、公共セクター(行政)、コミュニティセクター(住民・地域コミュニティ)に加えて、民間セクター(事業者)が都市づくりの重要な担い手としてクローズアップされるようになっている。これまでの法定都市計画やまちづくりに加えて、事業者による都市プロジェクトが都市づくりに欠かせない要素となっているためである。それゆえ事業者には、経済的価値を追求するだけでなく、社会的・文化的価値を実現し、どれだけ地域の発展に貢献できるかが問われているのである。
新幹線が開通した鹿児島中央駅周辺は、今後、益々大きな発展を遂げると思われるが、都市開発に関わる事業者が行政や住民・地域コミュニティと協働して、豊かな公共空間を含む魅力的な都市景観を創出していくことが強く求められるはずである。
今回のこの2つのビルは建築部門に個別に応募されたものであるが、審査会ではこれら2つのビルによって創出された都市景観を審査対象とし、建築部門と景観部門の審査区分を超える「特別賞」を授与することにした。事業者(建築主や設計者を含む)には、今後の鹿児島における都市づくりや都市景観の形成に対して、一層の地域貢献をしていただくことを願っている。
1.募集期間
平成24年5月21日~6月22日
2.募集対象
(1)建築部門
市内にあり、美しい街並みと豊かな都市環境に寄与し、街に潤いと魅力を与えている民間建築物で、平成14年4月1日から平成24年6月22日までに建築基準法による検査済証の交付を受けたもの
(2)景観部門
3.応募件数
(1)建築部門:25件
(2)景観部門:4件
4.審査会
(1)期間:平成24年8月24日~26日
(2)審査会委員
委員長 |
門内輝行 |
京都大学大学院工学研究科建築学専攻教授 |
---|---|---|
副委員長 |
井上佳朗 |
鹿児島大学法文学部教授 |
委員 |
木方十根 |
鹿児島大学大学院理工学研究科教授 |
委員 |
橋本文雄 |
鹿児島大学農学部準教授 |
委員 |
古川惠子 |
鹿児島女子短期大学生活科学科教授 |
委員 |
下原美保 |
鹿児島大学教育学部教授 |
委員 |
東川美和 |
NPO法人かごしま探検の会事務局長 |
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