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更新日:2025年6月10日
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桜島の大規模噴火時における市街地側も含めた市民等の避難に係る研究や火山防災教育等を行い、火山防災トップシティをさらに推進するため、令和7年4月1日に「桜島火山防災研究所」を設置しました。
火山防災トップシティ構想推進のための取組
桜島火山防災研究所は危機管理局危機管理課内に設置しました。研究所長1人、副所長1人、研究員2人、助手1人、事務1人(計6人)で構成されます。
桜島火山対策係から研究が必要な課題の提供を受けつつ、地域防災計画へ反映できる研究成果をフィードバックします。
研究体制
所長 |
井口正人(火山学・火山防災学:京都大学名誉教授) |
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研究員 | 着任予定(火山災害) |
研究員 | 着任予定(避難・交通工学) |
全体計画のコンセプト
想定される桜島の大規模噴火に備え、「大規模噴火でも犠牲者ゼロ」を実現する防災対策の構築を目指し、5期にわたる長期研究計画を策定しています。
(1)大規模噴火からの避難を研究対象とします。(2)ここでいう避難とは帰宅まで市民の帰宅までを含めます。(3)避難の範囲や期間は火山活動に強く依存することから、火山活動の現状の評価と将来予測を常に行いながら実施します。(4)噴火活動の長期化と推移の複雑化を見据えた研究計画とします。
全体計画
第1期 | 大規模噴火発生前の避難対応の研究 ー特に、市街地側の避難対象地区の設定とタイミング |
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第2期 | 大規模噴火継続中の応急対策に関する研究 ー即時的な噴出物の分布範囲の把握 |
第3期 | 大規模噴火後の対策に関する研究 ー噴出物、特に大量軽石火山灰対応など事後対応の効率化 |
第4期 | 避難の長期化を見据えた対応に関する研究 ー噴火活動予測、経済損失、メンタルケアなど |
第5期 | 復旧・復興に関する研究 ー集団移転、利用計画、復旧シナリオ構築など |
第1期:大規模噴火発生前の避難対応の研究
ー特に、市街地側の避難対象地区の設定とタイミング
避難、特に市街地側のおける大規模噴火発生前の広域避難に取り組みます。第1期の課題は避難対象地区の決定です。すなわち、どのくらいの厚さの軽石から避難するのかということと、その厚さの火山灰はどこに降るかです。
そのため、(1)大量軽石火山灰降下量と災害リスクの関係を明らかにする研究を進め、(2)避難対象地区を決定するために、軽石火山灰放出量と風速場(注1)の予測に基づき、軽石火山灰堆積量の予測マップを作成し、風速場の予測に応じて順次更新するシステムを開発します。
(3)避難指示を噴火発生前の30時間以上前に発令するために、噴火発生時刻の予測の研究を行います。広域避難には時間を要するため、噴火発生時刻の予測は重要です。これにあわせて避難指示のタイミングとすることを目指します。
(4)避難に要する時間を最小化するために、避難のための交通の最適化の研究を行います。
(5)市民が大量軽石・火山灰降下からの避難の特性と必要性を理解するための研究を行います。
注1:風向や風速の三次元分布を示したもの
平常時には、桜島の火山災害や火山災害対策にかかる調査・研究のほか、次世代を見据えた火山防災に関わる人材育成を図るための桜島火山防災教育や啓発を推進します。また、桜島火山防災に係る情報の収集・発信に取り組みます。
災害時には、鹿児島市が行う避難指示等に関して、適時・的確な助言を行い、大規模噴火時にも犠牲者ゼロを目指します。
京都大学火山防災研究センターや鹿児島地方気象台、大隅河川国道事務所からのデータ・情報を活用して課題解決と防災研究を進めます。また、京都大学火山防災研究センター、鹿児島大学、山梨大学、山梨県富士山科学研究所等との連携に基づく共同研究や火山分野の人材育成を推進します。
火山防災研究所長:井口正人
鹿児島市は桜島火山防災研究所を設立しました。これは、桜島北部のマグマたまりにおけるマグマの蓄積状況と今後の活動予測、大規模噴火発生に伴う災害の甚大さを考慮したものです。桜島の北部海域、姶良カルデラは大正噴火で80cm地盤が沈下しましたが、その後110年以上かけて隆起が続いたため、大正噴火のような大規模噴火を起こすのに必要なマグマはすでに蓄えられていると考えられます。今後20~30年で大規模噴火が発生する可能性が高いのです。ところが、大規模噴火によって引き起こされる災害は大正噴火時とは比べ物にならないくらい複雑で、多岐に及ぶはずです。その代表的な火山災害の要因が大量軽石・火山灰です。大正噴火と同等の規模の噴火と東風を想定すれば、鹿児島市街地には1mを超える厚さで軽石・火山灰が堆積し、市街地は埋没することとなります。軽石・火山灰の降下、堆積によって即座に生命に影響があるわけではありませんが、このような大量の軽石・火山灰の堆積によって道路交通は不可能となり、物流が滞ります。また、火山灰は電気、通信、上下水道など多岐にわたる分野のインフラに障害が現れます。強風によって火山灰が巻き上げられる状況はもはや住める環境ではないといえます。
このような予測をもとに、鹿児島市は桜島火山防災研究所を設置しましたが、この研究所が目指すものは火山防災行政が直接的に活用できる科学技術の開発です。しかもその科学技術は火山学的な知見に裏打ちされる必要があります。鹿児島市は大量の軽石・火山灰が市街地側に堆積することが予想される場合には、噴火発生前に避難情報を発表して、鹿児島市以外の市町村へ移動する広域避難を行うことを計画しています。そこで研究所の第1期の研究計画では、広域避難を実施する地区の決定のための降灰予測システムの開発と避難のための交通の最適化を実施することとしています。
一方、大量軽石・火山灰が降りやんでもそれで終わりではありません。市街地に堆積した軽石・火山灰の除去と処分には膨大な時間がかかります。火山灰の除去に時間がかかれば、繰り返される降雨によって堆積した軽石・火山灰は土砂災害の問題として顕在化します。また、社会インフラへの影響の長期化は経済の停滞の長期化を招きます。したがって、大量軽石火山灰の堆積からいち早く復旧・復興を成し遂げるためには、その除去をいかに短時間で成し遂げるかが問題となります。第2期以降の研究計画では、降灰量やその範囲の即時的な把握や火山灰除去手順の最適化の研究などに取り組んでまいります。
このように桜島火山防災研究所が取り扱う研究課題は複雑で一筋縄ではいかないものも多いのですが、課題解決のために誠心誠意取り組んでいく所存ですので、今後とも、ご支援、ご協力をお願い申し上げます。
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